KZから新作有線イヤホン「ZVX Pro」が発売されました。
1DD構成で、価格は約19ドルと前作と変わりません。
エントリーモデルとして評価の高かった「ZVX」の後継機ですが、一体どのように進化したのでしょうか?
今回は「ZVX Pro」を実際に使用し、「ZVX」や同価格帯のイヤホンと比較しながら詳しくレビューしていきます。
パッケージ

KZ製品の中でも、もっともコンパクトなタイプのパッケージ。
手のひらサイズで、従来通りのシンプルなデザインです。


箱を開けると、イヤホン本体が収められています。
箱の底には付属のアクセサリーも入っているので見ていきましょう。
アクセサリー

セット内容
- イヤーピース:S/M/Lサイズ ※Mサイズはイヤホン本体に装着済み
- ケーブル:3.5mm3極L字プラグ、0.75mmQDCタイプコネクタ
- 説明書
イヤホン
ビルド


フェイスプレートは立体的に3面カットされており、半開放型の構造です。
また、ZVXから受け継がれた空洞デザインも特徴のひとつ。
金属製の筐体で、片側11.2gと手に持つとズシリとした重さを感じます。


ノズルは直径5.5mmと細めの仕様。
装着感は良好で、耳全体にしっかりフィットし、重さをあまり感じさせません。
また、長時間の使用でも耳が痛くなることはありませんでした。
ドライバーユニット

ZVX Proは、従来の同サイズのドライバーを上回る性能を持つ、新開発のインナーマグネティック・ドライバーを採用しています。
大型マグネットと広径ボイスコイルの組み合わせにより、感度と瞬発力が向上し、繊細さと迫力を兼ね備えたサウンドを再現するとのことです。
ただし、ダイナミックドライバーの振動板のサイズや素材についての記載はありませんでした。
使用環境


- アンプ :TOPPING L30
- DAC :TOPPING E30
- ケーブル :付属ケーブル
- イヤーピース :付属イヤーピース
- エージング時間:20時間
周波数特性

音質評価

- 寒色系のクリアでクールな音質の印象です。
- 高音寄りでバランスが良く、金属筐体らしい硬めの音です。
高音域
- クリアでカチッとした音。
- 明るくギラついた印象があり、10kHz付近の金属音が強く主張する場面がある。
- 高音域がおとなしい楽曲では、空気感を多く含んで開放感のある心地よい鳴り方になる。
- 楽曲による影響を受けやすく、特にアニソンでは高音が刺さりやすく感じられることがあります。
中音域
- 音のこもりは一切なく、明瞭度が高い中音域。
- 分離感に優れ、輪郭がくっきりと浮き出る。
- 上下の帯域に押しつぶされるような感覚がなく、中音域にしっかりとした余白がある。
- ボーカルは力強さを感じないが、繊細で澄んだ歌声。
低音域
- キレが良く、引き締まっていて、余韻はほとんど残らない。
- テンポの速い楽曲でもしっかりと追従する。
- サブベースは控えめで、タイトな低音ではあるが、迫力はやや欠ける。
- 不足しているわけではないが、低音を響かせるような楽曲では物足りなさを感じることもある。
定位・音場
- 定位感に問題はなく、明確に感じられる。
- 音場は標準的からやや広め。
まとめ
金属筐体らしい音で、高音域は明瞭でクリアですが、楽曲によっては高音が強くギラつくことがあります。
最初はハイが出すぎているように感じましたが、鳴らし込むにつれて耳が慣れたのか、エージングが進んだのか、音が落ち着いて気にならなくなりました。
中音域は分離感が良く、音の輪郭がハッキリとしています。
低音域はキレが良く、テンポにしっかり追従しますが、サブベースが控えめで迫力に欠ける印象を受けます。
ZVX Proに合うジャンルは「POP」「アニソン」「バラード」「激しくないロック」で、逆にEDMやヒップホップのような低音重視の楽曲では物足りなく感じることがあります。
イヤーピース・ケーブル・アンプ
インピーダンス | 18Ω±3Ω |
感度 | 105dB±3dB |
周波数帯域 | 20Hz – 40kHz |
スマホでも十分に鳴らすことができますが、少し力強さが足りないと感じました。
ドングルDACを使用すると、「ZVX Pro」の良さがより引き出されると思います。
付属のケーブルのようにメッキ処理されていないOFCでリケーブルし、モニター寄りのサウンドにすると印象が良くなりました。
イヤーピースは、個人的にFinal Eタイプが合うと感じました。
比較
「ZVX Pro」と、前モデルの「ZVX」、定番モデル「ZSTX」の3モデルを比較します。


KZ ZVX Pro(黒)は、シェルがメタリック仕上げ、スポーティーで高級感のあるデザインです。
小ぶりなボディで、スリムな形状となっています。
金属筐体ですが、装着時は重さを感じることがなく、耳にフィットして安定感があります。
KZ ZVX(黒)は、ZVX Proとほぼ同じ形状を採用していますが、表面はザラつきのあるマット仕上げとなっています。
装着感に関してはZVX Proと変わりません。
KZ ZSTX(黒)は、樹脂製シェルを採用し軽量ですが、装着感はZVXシリーズにやや劣る印象を受けます。
また、ソケットは0.75mm 2pin(タイプB)を採用しています。
モデル | ドライバー構成 | 筐体素材 | インピーダンス | 感度 | 価格 |
KZ ZVX Pro | 1DD | 金属 | 18Ω±3Ω | 105dB±3dB | 約3000円 |
KZ ZVX | 1DD | 金属 | 23Ω±3Ω | 109dB±3dB | 約2800円 |
KZ ZSTX | 1DD + 1BA | 樹脂 | 12Ω | 107dB/mW | 約2300円 |
KZ ZVX Proは、新開発のドライバーユニットを搭載しており、前作のZVXと比べて音響設計が進化しています。
これに伴いインピーダンスや感度にも違いがありますが、実際に必要な駆動力は変わりません。
KZ ZSTXは、1DD+1BAのハイブリッド構成を採用しており、1DDのZVXシリーズと異なります。
筐体も金属ではなく樹脂製となっており、音質・装着感の両面で異なる個性となっています。
3モデルとも価格差は1,000円以内となっています。

音質の比較
KZ ZVXは、3モデルの中で最もサブベースの量感があり、低域の沈み込みが感じられます。
またミッドベースはそこまで主張せず、全体的にバランスの取れたチューニングとなっています。
中高音域は、ZVX Proと聴き比べると粗さがあり、ここが両モデルの決定的な差です。
KZ ZVX Proは、ZVXと同様に金属筐体ならではの硬質で締まりのある音です。
低域は控えめでタイトな印象。
そのぶん中高域が前に出ており、音質はクリアで解像度感が高い。
ZVXと比較すると個人的にはマイナーチェンジレベルと捉えていますが、ZVXが好みであれば買い替える価値は十分にあると思います。
現在、どちらを買うか選ぶなら、ZVX Pro一択です。
1DD+1BAというハイブリッド構成のKZ ZSTXは、ミッドベースが強調されており、3機種の中では最もドンシャリ傾向です。
高域はシャープで鋭い音色が特徴で、金属筐体ではないため響き方にも違いがあります。
音場はやや狭く感じられるものの、これはあくまでも他の2機種と聴き比べた際の印象です。
単体で聴いた場合は、そこまで狭さを感じることはありません。
すでにZSTXを所有していて大きく音域バランス変えたくないが、1DDらしいまとまりのある音を試してみたいという方には、ZVXProはおススメです。
総評
ZVX Proは、評価の高いZVXの系譜を受け継ぎつつ、新たなドライバーによりクリアで解像度の高いサウンドへと進化していることがわかりました。
低域はタイトで、全体的に中高音域寄りのバランスですが、幅広い層に受け入れられる音質だと思います。
約2,500円という価格を考えると完成度は高く、寒色系のサウンドが好きな方に特におすすめできるイヤホンです。
販売情報
「KZ ZVX Pro」は、各サイトにて18ドル(約2500円)で販売しています。
ZVXについてはこちらからどうぞ。

コメント