HIDIZSは新型インイヤーモニター「MS2 PRO」を、2025年8月7日発売しました。
MS2 PROは、10.2mmのダイナミックドライバーとバランスド・アーマチュアドライバーをそれぞれ1基ずつ搭載したハイブリッド型イヤホンです。
BAドライバーには、クリアな高音域を実現するためにカスタムチューニングされた「HIDIZS Silvercore BA」が採用されています。
価格は、発売記念プロモーションとしてHIDIZS公式サイトでは69ドル、Amazonでは11,339円となっています。
今回はクラウドファンディングは行われず、各販売サイトから直接購入できます。
この記事では、音質や他モデルとの比較を交えながら、MS2 PROを詳しくレビューしていきます。
パッケージ

HIDIZSらしいシンプルで高級感のあるパッケージデザインです。


ボックスを開けるとイヤホン本体が丁寧に収められています。
下の段にはイヤーピースやケーブルなどのアクセサリー類が収納されていました。
アクセサリー

セット内容
- イヤホンケース
- イヤーピース(白濁色・高音タイプ):S/M/Lサイズ
- イヤーピース(黒色・バランスタイプ):S/M/Lサイズ
- 着脱式ケーブル:0.78mm2Pinコネクタ
- 交換用チューニングフィルター ×2種(本体装着分を含め計3種類)
- 説明書など
ケーブルは銀メッキされたOFC(無酸素銅)が採用されており、4.4mm5極バランスプラグか3.5mm3極アンバランスプラグが選択できます。
イヤーピースは2タイプあり、それぞれ3サイズずつ付属しています。
チューニングフィルターも付属しており、本体装着分をあわせて3種類のチューニングが可能です。
イヤホン
ビルド


亜鉛合金製のシェルには鏡面仕上げが施されており、ピカピカに輝いています。
鏡面仕上げのイヤホンは数多く見てきましたが、その中でもMS2 PROはかなりきれいな部類に入ります。
金属筐体は撮影時に照明を当てると表面の歪みが目立つことが多いのですが、MS2 PROはほとんど歪みが見られず、ビルドクオリティの高さを感じました。
フェイスプレートにはレザーテクスチャのパネルがあしらわれており、デザインのアクセントになっています。
見た目にも高級感があり、とてもカッコいいです。
「サイにインスパイアされたデザイン」とのことですが、正直なところ、自分には良くわかりませんでした⋯。


ノズルの太さは約6mmと平均的ですが、ステムは短めです。
付属イヤーピースも同様ですが、軸の長いイヤーピースを装着すると外れやすくなったり、耳の中に残ってしまうことがあり、煩わしさを感じました。
重量は片側13.3gと重めで、手に持つと重さが伝わります。
それでもシェル自体は小ぶりで、装着感は良かったです。
長時間の使用でも耳が痛くなることはなく、快適に使用できました。
ドライバーユニット


公式サイトの情報は英語中心で分かりづらかったため、翻訳してまとめてみました。
10.2mmダイナミックドライバー
PU+PEEK素材の振動板には、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)コーティングが施されています。
これにより、音の立ち上がりが速く、クリアで繊細なサウンドを実現しています。
磁気回路にはN52マグネットを2つ使用しており、振動板を力強くかつ正確に駆動。
深みのある低音と、広がりのある音場表現に貢献しています。
HIDIZS Silvercore BA
高音域とボーカルの再現性に特化したカスタムチューニングが施されており、歪みを抑えながら、繊細で空気感のある高音を表現します。
刺激感を抑えた設計により、長時間聴いても疲れにくい仕上がりです。
周波数特性


(※クリック・タップで拡大できます)
Harman in-ear 2019ターゲットカーブに準拠したチューニングが施されています。
前回レビューしたMK12 Turrisも同じハーマンカーブを採用していたので、HIDIZSのエンジニアの方はこの音質傾向を好んでいるのかもしれませんね。
付属のチューニングフィルターを交換することで、中音域から高音域にかけて音質に変化が現れるようです。
ノズルの形状はすべて共通ですが、Oリングの色によって種類を判別できます。
音質
使用環境


アンプ | TOPPING A30Pro |
DAC | TOPPING E30 |
ケーブル | 付属ケーブル |
イヤーピース | バランスタイプ |
チューニングフィルター | バランスタイプ |
エージング | 100時間 |
音質評価

高音域は硬質で寒色系、低音に向かうにつれて徐々に暖かみと柔らかさが増していく。
ハイブリッド構成ですが、各帯域は滑らかなグラデーションで自然につながっています。
バランスの取れた、丁寧な音作りが印象的です。
高音域
- 金属筐体とBAドライバーの影響により、ディティールが明確。
- 音の立ち上がりが速く、チャキチャキとした鳴り方。
- ピーキーさはなく、聴き疲れしにくいチューニング。
クリアで空気感を含んだ高音ですが、最も高い帯域は控えめで、音の伸びに物足りなさを感じる場面があります。
優しい質感の音ではあるものの、BAらしい元気な高音を好む人にとっては、やや平坦に感じられるかもしれません。
中音域
- 音の分離がよく、ひとつひとつの音がクリアに聴こえる。
- 音の詰まりがなく、余裕を持って鳴らす。
- 優等生的なサウンドだが、パンチには欠ける。
ドライバー間のつながりもスムーズで、不自然さを感じさせない音です。
粗さのない丁寧な中音域ですが、前に出てくるようなダイレクト感は控えめで、落ち着いた印象です。
低音域
- 低域はしっかりと主張し、圧や迫力がある。
- 若干の余韻を残しつつ、高音域に対して柔らかい音質。
タイトさよりも柔らかさを重視したチューニング。
アタック感は少なめで、ボリュームを上げても暴れず、楽曲の土台を下で支えます。
定位・音場
- 音場は広めで、特に奥行きを感じる。
- 定位も正確で問題なし。
まとめ
エントリーモデルにありがちな粗さがなく、落ち着いた音で丁寧に仕上げられています。
ボーカルも優秀で、男女問わずクリアで伴奏に埋もれることはありません。
ただし、全体的に若干の距離感があり、サビなど「ここぞ」という盛り上がりでは熱量が伝わりにくい印象もあります。
激しいロックやEDMのような音楽ジャンルには不向きだと感じました。
MS2 PROの魅力が最も引き立つのは、アコースティックやジャズ、しっとりとしたバラードなど、落ち着いたジャンルの楽曲です。
イヤーピース・ケーブル・アンプ

インピーダンス | 17Ω |
感度 | 111dB |
周波数帯域 | 20Hz – 40kHz |
MS2 PROは、スマートフォンでもしっかりと鳴らせます。
特定の音域が極端に弱くなったりすることもありません。
ただ、個人的にはバランス接続時の印象が特に良く、平坦になりがちな音にメリハリが生まれて、より楽しくリスニングできます。
どの機器を使っても出力面で不足はないので、ドングルDACを使ったバランス接続をおすすめします。
イヤーピースは前述の通り、軸が短いタイプがおススメです。
MS2 PROは小ぶりでフィット感が良いので、装着感よりも音質の変化を重視して選んでよいでしょう。
リケーブルに関しては、付属のOFCケーブルよりも純銀線のケーブルが相性が良いと感じました。
高音域の伸びが向上し、音に彩りが加わります。
ぜひ、この組み合わせを試してみてください。
比較
今回は、前モデルである「HIDIZS MS2」と、同価格帯のハイブリッドイヤホン「TRUTHEAR HEXA」を比較します。
また、「7HZ Salnotes Zero」については、音質ではなくイヤホンのサイズ感を比較します。
7HZ Salnotes Zero

個人的には「Salnotes Zero」はイヤホンの中でもかなり小ぶりな部類だと思っていましたが、「MS2 PRO」もわずかに厚みがある程度で、ほぼ同等のサイズ感でした。
ただし、材質が金属と樹脂で異なるため、重量はかなり違うので注意が必要です。
装着感については大きな差は感じませんでした。
つまり⋯小さいイヤホン好きのみなさん、集合です!
HIDIZS MS2
前モデルの「MS2」は同じドライバー構成ですが、比較すると音の粗さに違いがあります。
特にディテールの表現が異なり、「MS2 PRO」のほうが優れています。
「MS2」の高音域は派手で、BAドライバーらしい元気な響きがありますが、「MS2 PRO」はより落ち着いた音質です。
また低音域も違いがあり、「MS2 PRO」は派手さは存在感があります。
「MS2」は発売から約4年経過しているため、その間に技術が向上したことが感じられます。
TRUTHEAR HEXA
音の厚みには違いがあります。
MS2 PROは中音域に厚みを感じさせるのに対し、HEXAはあっさりとした印象です。
この違いは、MS2 PROの低音域の質量の多さに起因しており、同じハイブリッドイヤホンでも明確な差が感じられます
HEXAの中高音域は、よりクリアで繊細さを感じられます。
MS2 PROは1BA+1DDのドライバー構成ですが、HEXAは3BA+1DDでBAの数が多く、その違いが中高音域の音質に影響していると考えられます。
HEXAはBAを主体として、DDを補助的に採用しているのに対し、MS2 PROはDD主体でBAを補助的に用いているイメージです。
どちらも高音質ですが、キャラクターは異なります。
MS2 PROは音場が広く、全帯域でバランス良く鳴らすのに対し、HEXAは高音域をクリアで美しく響かせるタイプです。
総評
このコンパクトな筐体からは想像できないほどの音場の広さ。
さらに、ディテールが明確で、バランスの取れたサウンドが優秀です。
音質・ビルドクオリティともに、1万円台とは思えない完成度で、価格以上の価値を感じます。
- 小さいイヤホンが好きな方
- おとなしく、ゆったりとした音質で音楽を楽しみたい方
- ハイブリッドイヤホンを試してみたい方
- エントリーモデルからステップアップしたい方
そんな方には、HIDIZS MS2 PROは特におススメです。
販売情報

「HIDIZS MS2 PRO」は、Amazonおよび公式サイトにて販売中です。
本体カラーは全3色(※Amazonでは2色)、プラグは3.5mmと4.4mmから選択可能です。
さらに現在は【発売記念セール】を開催中ですので、気になる方はぜひチェックしてみてください。

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