水月雨から、待望の新作イヤホン「Kadenz」が発売されました。
以前よりKATOの後継機種が絶えず噂されていましたが、ついにそのベールを脱ぎました。
人気モデル「KATO」や「KXXS」など、頭文字にKがつくKシリーズの最新作で、多くのユーザーから期待されていたモデルです。
10mmのシングルダイナミックドライバーを搭載し、振動版にはシリーズ伝統のDLCがさらに進化、音質を継承しつつ、新たな進化を遂げています。
価格は190ドルと、前作「KATO」と比較しても大きな変更はありません。
「Kadenz」というモデル名は「終止形」という意味合いを持つことから、シリーズの最終章を飾るモデルとも言われています。
今回は、そんな「Kadenz」の魅力を余すことなくレビューしていきます。
───シリーズ最終章『Kadenz』の始まりです。
パッケージ
いつも楽しみにしている水月雨のカバーデザインですが、今回はまるでオーディエンスに手を振るようなポーズがとても印象的です。
その姿はまるでカーテンコールのようです。
ちなみに、水月雨製品のカバーデザインは、複数の絵師の方々が手がけていらっしゃいますが、KadenzはDUSKやJOKERと同じ絵師の方によるものと思われます。
裏面には、イヤホンの特徴や仕様が詳しく記載されています。
カバーを外すと、高級感のある化粧箱となっていました。
KATOと同じようなパッケージデザインとなっており、統一感のある印象を受けます。
中蓋を開けると、イヤホン本体、専用ケース、そして交換用のイヤーピースなど、様々なアクセサリーが入った箱が収められていました。
イヤホンの表面は、保護フィルムでしっかりと覆われており、丁寧なパッケージングとなっています。
アクセサリー
セット内容
- イヤホンケース
- アクセサリーポーチ
- イヤーピース:「清泉 – SpringTips」S/M/Lサイズ
- イヤーピース:黒色 S//M/Lサイズ
- 交換式ノズル:2セット
- ケーブル:4.4mm5極プラグ、0.78mm2Pinコネクタ
- 4.4mm5極→3.5mm3極 変換アダプター
- 4.4mm5極→USB TYPE-C 変換アダプター「ECHO-B」
- 説明書等
これでもかというほどの充実した付属品が魅力です。
通常、4.4mmバランスプラグのケーブルが付属する場合、3.5mmか4.4mmのプラグを選択して購入するか、交換式プラグを採用しているものが一般的です。
Kadenzは基本ケーブルが4.4mmバランスプラグのみという構成は、意外でした。
今回は、3.5mmへの変換アダプター、ドングルDAC「ECHO-B」が付属。
2種のイヤーピース、交換式ノズルも用意されており、様々な接続方式や音質を求めるユーザーのニーズに応える、きめ細やかなセット内容となっています。
KATOを手にしたあの時も、付属品の多さと質の高さで購入欲が満たされましたが、今回のKadenzはそれを上回る充実感です。
きっとアナタもKadenzのパッケージを手に取った瞬間から、気持ちが高揚するでしょう。
イヤホン
ビルド
イヤホンの形状はKATOをベースとしつつ、フェイスプレートにカット処理を施したデザインとなっています。
ステンレス鋼を素材とし、MIM(金属粉末射出成形法)という技術を用いて成形しています。
シェルは手作業で研磨した後、サンドブラスト処理を施され、摩耗性や耐久性が向上。
KATOは傷つきやすいため扱いに注意が必要でしたが、マット仕上げとなっており、安心して使用できます。
ただし、重量は片側12.6gとKATOよりも重くなっています。
2Pinソケットはフラットではなく、奥まった位置に埋め込まれています。
ノズルの口径は6.6mmと標準的なサイズよりも太めですがステムは短いので、耳に装着してもノズルの太さが気になることはありません。
また、KATOやCHU2同様、ノズル交換が可能となっています。
シェルはKATO同様に多角形デザインを使いまわし継承。
装着感は良好で、イヤホンが耳全体にピッタリと収まり、ノズルの太さや重量もそれほど気にならず、快適に使用できました。
スペック
2年の歳月をかけて開発されたKadenzのダイナミックドライバー。
どんな点が進化したのか、音質はどのように向上したのかチェックしてみます。
第2世代スーパーリニアダイナミックドライバー
大幅な改良が加えられた第2世代スーパーリニアダイナミックドライバーを搭載しています。
設計、材料、技術の多岐にわたる改良により、音質の飛躍的な向上を実現しています。
特に、ダイナミックドライバーの心臓部である磁気回路の最適化と、振動板の構造改善がイヤホンの高音質化に大きく貢献しています。
TAC ダイヤモンドコーティングドーム複合ダイヤフラム
Kadenzのダイナミックドライバーに搭載されたTACダイヤモンドコーティングドーム複合振動板は、従来のダイナミックドライバーの性能を大きく向上させます。
LCPドーム基板: 高剛性な液晶ポリマーを基板に採用。
ダイヤモンドコーティング: 高価な精密機器に使用される堆積プロセスで、高剛性の人工ダイヤモンド層をコーティング。
DLCよりも高いSP3結合を実現し、振動板全体の剛性を大幅に向上。
ポリウレタンサスペンション: 柔軟性と高いダンピング特性を兼ね備え、低音のダイナミクス向上と大振幅時の歪み低減に貢献。
これらの特徴によりハイブリッド型に匹敵する高性能なダイナミックドライバーとして、高音域から低音域までバランスの取れた、クリアで自然なサウンドを実現しています。
ドライバー | 10mm Dynamic Driver |
インピーダンス | 35Ω±15% |
感度 | 122dB/Vrms |
周波数帯域 | 8Hz – 21kHz |
サウンド
使用環境
- アンプ :TOPPING L30
- DAC :TOPPING E30(AK4493)
- ケーブル :付属ケーブル→3.5mm変換
- イヤーピース:付属イヤーピース「清泉 – SpringTips」
- エージング :10時間
音質
あぁ〜!水月雨の音ォ〜!!
女性ボーカルの美しさ、クリアで煌びやかな高音域。
多くの人がイメージする水月雨サウンドそのものです。
ただし、感動はない。
高音域
高音域は、水月雨らしいクリアで煌びやかなサウンドです。
過度な強調はなく、耳に刺さるような不快感がなく、ピーキーっぽさは感じません。
このチューニングこそ、水月雨の真骨頂と言えるでしょう。
音に滲みがなく、歯切れの良い硬質なサウンドで、一つ一つの音が鮮やかに聞こえます。
一方で、やや人工的で冷たく、脚色された音質という印象があります。
中音域
中音域は非常に繊細で、楽器の音色やボーカルのニュアンスが細やかに表現されています。
密閉型でありながら、開放感のあるサウンドで、音場が広がりを感じます。
音の立ち上がりが早く、音の抜け感が良いので、一つ一つの音がはっきりと分離して聴こえます。
複雑な楽曲でもそれぞれの音が混ざり合うことなく、クリアに聴き取ることができます。
音源の荒い部分まで分かってしまうほどです。
女性ボーカルがフォーカスされており、水月雨らしい美しい歌声が堪能できます。
倍音の細やかなニュアンスまで感じられます。
特に、ボーカルとコーラスが織りなすハーモニーは、息をのむほど美しい。
低音域
低音もクリアな音質ではあるものの、サブベースとミッドベースの量感が不足しており、重低音の迫力や量感が物足りなく感じられます。
中高音域、特にボーカルを最大限に引き立たせるチューニングが施されており、楽曲全体のバランスにおいて、低音はサポート的な役割に留まっている印象を受ける。
そのため、低音が重要な役割を担う楽曲においては、楽曲全体の重心が軽くなってしまい、物足りなさを感じることがあります。
定位・音場
サウンドステージは広く、音の広がりを感じることができます。
定位感がしっかりと捉えられ、ボーカルは中央、目の前で歌っているように感じられます。
ケーブル・アンプ
付属のケーブルは少し硬さを感じますが、取り回しは悪くなく、光を当てるとキラキラ輝く綺麗なケーブルです。
銀メッキ単結晶銅を使用しており、クリアな音になります。
高音域の透明感が増し、Kadenzの持つ高解像度なサウンドをより鮮やかに鳴らします。
個人的には、付属のケーブルは十分にやれる子で、満足できる音質だと思います。
また、変換アダプターも付属しているので、3.5mmSE接続も可能です。
スマホの直挿しでも十分に鳴らすことのできるイヤホンです。
また、付属のドングルDAC「ECHO-B」により、スマートフォンに接続することで、最大32Bit/384kHzのハイレゾ音源に対応し、高音質な音楽再生が可能です。
バランス接続によるパワフルな駆動力は、Kadenzのポテンシャルを最大限に引き出すことができます。
さらに、DSPを搭載しており、水月雨の専用アプリ「MOONDROP Link」でEQ調整など、ユーザーの好みに合わせたチューニングが可能です。
スマートフォンで音楽を楽しむオーディオ初心者の方には本当におススメしたい。
イヤーピース・交換式ノズル
3種類の交換ノズルが付属しており、A、B、Cと記されています。
KATOのように材質を変えて音質を調整するのではなく、ステムの長さによって音響特性を調整しています。
一般的に、ステムが短いほど高音域が強調され、長いほど低音域が強調される傾向がありますが、Kadenzではその差はわずかでした。
最新の改良型フィルターを搭載し、中高周波数帯域での音質が向上しています。
イヤーピースは、汎用タイプと清泉-SpringTipsの2種類が付属しますが、個人的には清泉-SpringTipsがおすすめです。
比較
シリーズ前モデルのKATOと比較します。
形状:
KATOと比較すると、カット加工によりデザインは変化していますが、全体的なフォルムは大きく変わっていません。
装着感もほぼ変わらず、わずかな違いはステムの長さが要因であると考えられます。
特性:
周波数特性を見ると、KATOは低音域がやや強調されており、Kadenzは3kHz付近のが強い傾向が見られます。
音質:
実際に聴き比べてみると、KATOは低音がしっかりと感じられ、より温かみのある自然なサウンドに聞こえます。
Kadenzは高解像度でクリアなサウンドで、細かな音のニュアンスまで捉えることができます。
しかし、Kadenzの音は少し人工的に聞こえました。
どちらも女性ボーカルが優秀なイヤホンですが、Kadenzは透き通るような透明感のあるボーカル、KATOは繊細な表現力が魅力です。
今回、比較することでKATOの完成度の高さに改めて気づかされました。
Kadenzを聴いた時に感動が薄く感じられたのは、KATOという高い基準があったからかもしれません。
KATO所持しているが、Kadenzを購入すべきか?
音質面では確かにKATOより改善が見られますが、個人的には劇的な変化は感じられませんでした。
どちらのイヤホンも音質の特徴は似ており、細かい部分での違いだけで、優劣はありません。
KATOの自然なサウンドを好む方もいれば、Kadenzの高解像度なサウンドを好む方もいると思います。
ただし、KATOの低音が物足りないと感じている人は、Kadenzを聴くとさらに物足りなく感じるでしょう。
実際に両機種を聴き比べていただくのが一番だと思います。
迷っているのであれば、購入を急ぐ必要はなく、じっくりと検討されることをおススメします。
え?水月雨が好き?なら、迷うこともないよね?…GOだよ。
総評
筆者はKシリーズの新作、KATOの後継機を心待ちにしていました。
ついに発売されたKadenzは、シリーズ最終章にふさわしいパッケージ、付属アクセサリー、そしてイヤホンでした。
前作のKATOが既に完成度の高いイヤホンであったため、Kadenzには大きな感動はありませんでしたが、素晴らしいイヤホンであることは間違いありません。
水月雨らしいクリアで煌めくような高音域が魅力的で、高い解像度感で、繊細なニュアンスを捉えます。
特に美しい女性ボーカルとの相性がよく、まるで目の前で歌っているかのような生々しい息遣いや、透明感のある歌声が楽しめます。
シリーズ最終章『Kadenz』は完成度の高いイヤホンに仕上がっていました。
今後、3万円前後のイヤホンとして、定番の一本となるでしょう。
販売情報
KadenzはSHENZHENAUDIOなどで購入できます。
価格は約190ドル、現在の為替レートで約3万円弱です。
日本での発売は未定ですが、3万円から3.5万円程度の価格帯になると筆者は予想しています。
近頃では、本国での発売から日本での発売までの期間が短縮されている傾向にあります。
また、水月雨ジャパン株式会社の設立により、日本での展開も加速すると期待されます。
シンセンオーディオの購入方法については下記の記事からどうぞ。
このイヤホン見てて思ったんだけどバーチャファイター2にデュラルってキャラいたよね。
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