HIDIZSは、最新のダイナミック型インイヤーモニター「MK12 Turris」を2025年6月10日、Kickstarterにてクラウドファンディングを開始。
MK12 Turrisは、12mmの大型ダイナミックドライバーを搭載したシングルDD構成です。
振動板には純度91%の純マグネシウム素材を採用。
高剛性かつ軽量という特性により、広帯域での優れた応答性と低歪みが期待されます。
また、低域には迫力、高域にはクリアさをもたらす音響設計も特徴です。
プロジェクト開始時のEarly Bird(早期支援)価格は229ドルに設定されており、仕様と価格のバランスにも注目です。
今回は、正式発表に先駆けて試聴する機会をいただいたので、他モデルとの比較も交えて、詳細にレビューしていきます。
パッケージ

パッケージは比較的大きく、頑丈でしっかりとした作りです。
グレーカラーを基調としたシンプルなデザインで、落ち着いた印象です。

裏面にはMK12 Turrisの仕様が詳細に記載されており、記載言語は中国語・英語・日本語の3か国語対応となっています。
日本語表記があることから、日本市場も重要なマーケティング対象として捉えられていることが分かります。


箱を開封するとMK12 Turris本体が厳重に収納されており、その下にはイヤーピースのセットや、イヤホンケースなどの付属品が同梱されています。
アクセサリー

セット内容
- イヤホンケース
- イヤーピース(ボーカルタイプ):S/M/Lサイズ
- イヤーピース(バランスタイプ):S/M/Lサイズ
- イヤーピース(ベースタイプ):S/M/Lサイズ
- 着脱式ケーブル:4.4mm5極プラグ、0.78mm2Pinコネクタ
- 交換用チューニングフィルター ×2種(本体装着分を含め計3種類)
- 説明書など
ケーブルは銀メッキされたOFCを採用しており、4.4mm5極バランスプラグか3.5mm3極アンバランスプラグの選択が可能です。
イヤーピースは音質傾向の異なる3タイプが3サイズずつ付属。
さらに、チューニングフィルターも付属ており、イヤホン本体の装着済みと合わせて、最大9通りのチューニングが可能です。
イヤホン
ビルド


ベニクラゲからインスパイアされたデザインはとても特徴的です。
CNC加工されたアルミニウムボディはまさに堅牢堅固で、ビルドクオリティは非常に高く、完成度が高い。
重量は片側9.8gで、イヤホンとしてはやや重めの部類に入りますが、フルメタルシェルの中では比較的軽量な設計となっています。


ノズル径は6mmと標準的で、付属する交換用ノズルも同じ直径となっています。
筐体サイズは大きめですが、ボディ全体が耳にしっかりとフィットするため、装着感は良いと感じました。
また、片側約9.8gという重量も、実際の装着時にはほとんど気にならず、長時間使用しても耳が痛くなることはありませんでした。
ドライバーユニット

磁気回路の進化
MK12 Turrisは、次世代型の磁気回路を採用し、118dBという高感度と広いダイナミックレンジを実現しています。
全高調波歪(THD)は0.3%未満、応答速度はわずか0.01msとされており、高い明瞭度、スピード感、そして正確な音像定位が期待されるスペックです。
ダイアフラムの進化
従来のアルミニウム・リチウム系素材から進化し、振動板には純度91%の純マグネシウム素材を採用。
これにより10Hz〜45kHzという非常に広い再生帯域をカバーしつつ、高剛性・軽量という特性を両立しています。
結果として、低域の重厚さと高域の繊細さを両立した表現力が期待される設計です。
このように、公式では高性能素材と先進的な磁気回路による音響性能が強調されていますが、何より注目なのは、12mmの大型・純マグネシウム製ダイアフラムが実際にどのような音を奏でるのかという点です。
周波数特性


(※クリック・タップで拡大できます)
MK12 Turrisは、Harman in-ear 2019ターゲットカーブに準拠したバランス志向のチューニングが施されています。
付属のチューニングフィルターによる音質変化も公式で公開されており、グラフを見る限りでは5~10dB程度の高音域に変化が見られます。
なお、音質の調整はノズルの材質によるものではなく、内部に組み込まれたフィルター素材の層構造や密度によって音質が変わる設計となっているようです。
音質
使用環境


アンプ | TOPPING L30 |
DAC | TOPPING E30 |
ケーブル | 付属ケーブル |
イヤーピース | バランスタイプ |
チューニングフィルター | バランスタイプ |
エージング | 60時間 |
音質評価

- 主張すべき音はしっかりと前に出ており、若干低音寄りで全体としてはバランスが取れている。
- 音色は寒色系・暖色系のいずれにも偏らない中庸な傾向。
- 高音域はやや寒色寄り、低音域はやや暖色寄りの印象。
高音域
- 伸びのある高音域。
- 硬質でダイナミックな音質傾向。
- キツさやシャリつきは抑えられており、クセのない音。
中音域
- 厚みのある中音域。
- こもりや詰まりは一切なく、クリアな音。
- 解像度が不足しているわけでは無いがエッジが加わると理想的。
低音域
- タイトさと迫力を兼ね備えた力強い低音域。
- やや余韻を残しつつも、キレのある鳴り方をする。
- 深さがあり、必要な場面ではしっかりと主張する。
定位・音場
- 音場は広く、左右だけでなく上下・奥行き方向の展開力にも優れている。
- 上下は低音域を底として高域を上層に積み重ねるような表現が感じられる。
- その中で音の位置を確実に把握できる音像定位の正確さが素晴らしい。
まとめ
男性・女性問わず、ボーカルは上手で、声の伸びや倍音ががとても綺麗です。
ボーカルの距離感は楽曲によって異なり、近いときはしっかりと近くに、離れているときは自然に遠くに感じられます。
特に印象的なのは、ボーカルとコーラスの位置関係です。
「コーラスがボーカルよりも近い・遠い」「コーラスが何重にも重ねられている」といった空間の構成を感じられて面白いです。
さらに、そこから広がる楽器の定位もしっかりと把握することができます。
公式ページではヘッドホンとの比較がされていましたが、「なぜイヤホンでヘッドホンと比べるのか」と最初は思っていました。
しかし、実際に聴いてみて、その理由に納得することができました。
楽曲のジャンルは問わず、打ち込み系のアニソンからクラシックまで幅広く対応できます。
音数の多い曲でも破綻せず、強弱のある楽曲もしっかりと表現してくれます。
ただし、録音環境の良し悪しがそのまま反映されるため、良くも悪くもソースに対してとても正直です。
録音やミックスの粗が目立ってしまう場合もありますが、それもこのイヤホンの特徴と言えます。
どの帯域にも余裕があり、「今まで聴こえなかった音が聴こえる」というよりも、「すべての音が綺麗に聴こえる」といった印象です。
音の距離感や定位に優れていて、ドラムのタム回しなどは、音の動きを目で追えるような感覚になります。
これが12mmの純マグネシウムダイアフラムの効果であるなら、HIDIZSは素晴らしいイヤホンを作り上げたと思います。
イヤーピース・ケーブル・アンプ

インピーダンス | 32Ω |
感度 | 111dB |
周波数帯域 | 10Hz – 45kHz |
MK12 Turrisは、スマートフォンでも十分に鳴らせるモデルです。
ただし、本機のポテンシャルを最大限に引き出すためには、ドングルDAC以上の出力を持つアンプを併用することをおススメします。
音の解像度や低音の迫力が大きく変化します。
本機は、イヤーピースの交換やリケーブルによる音質変化が大きい機種です。
付属の純正ケーブルやイヤーピースでも十分ですが、ここは自分好みの音にカスタマイズしたいです。
付属の純正ケーブルはOFCが採用されており、モニター寄りのサウンドという印象を受けました。
そこで、純銀線を採用したケーブルに交換したところ、中音域の輪郭がよりくっきりと浮かび上がるようになりました。
また、特徴的なデザインのイヤホンなので、それに合わせたデザインにリケーブルしてみるのも楽しいです。
イヤーピースはHIDIZSの「ET01」に交換しています。
これにより、中音域と高音域がより滑らかになり、全体的に落ち着いたトーンへと変化しました。
比較
今回は「MOONDROP Kadenz」と比較していきます。
というのも、似たような価格帯の1DDイヤホンを所持していなかったため、必然的にKadenzとの比較となりました。


モデル | ドライバー構成 | 筐体材質 | 重量(片側) | ソケット | 価格 |
HIDIZS MK12 Turris | 1DD|12mm(91%純マグネシウム) | 金属 | 9.8g | 0.78mm2Pin | 約33,000円 |
MOONDROP Kadenz | 1DD|10mm(TACダイヤモンドコーティング) | 金属 | 12.6g | 0.78mm2Pin | 約27,000円 |
写真の通り、両機種はサイズ感が大きく異なります。
また、重量も異なり、Kadenzのほうが約3gほど重くなっています。
MK12はサイズが大きいのですが、耳全体で筐体を支えるような形状となっており、装着感は良好です。
重さも装着時にはあまり気になりませんが、イヤホンを「付けている感」は強くあります。
対してKadenzも装着感は良好ですが、ずっしりとした重さを耳に感じやすくなっています。
両モデルの大きな違いはドライバーです。
特に振動板のサイズや素材に大きな違いがあり、音質にも個性が出ています。
どちらもノズルの交換による音質チューニングや、0.78mm 2Pinソケットを採用している点は共通しています。
MK12 Turrisに関してはEarly Bird価格を日本円に換算、MOONDROP Kadenzはe☆イヤホンでの販売価格です。
MOONDROP Kadenz

- 音色は確実に異なり、硬質で寒色系のKadenzに対し、MK12 Turrisはやや温かみのある音色。
- 高音域の明瞭感に大きな差はないが、Kadenzは繊細で、MK12 Turrisはダイナミックな表現。
- 中音域はKadenzがクリアで分離感が高く、対してMK12 Turrisは厚みのある音。
- MK12 Turrisは音に迫力があり、特に低音は周波数特性グラフ以上に明確な違いを感じる。
- KadenzはKATOに比べて音場が広くなっているが、それでもMK12 Turrisのほうがさらに広い。
音のキャラクターがまったく異なるため、単純に優劣をつけるのは難しいですが、臨場感や迫力の点ではMK12 Turrisが圧倒的です。
特に音場や定位感の違いは歴然としており、その差に驚かされます。
Kadenzはクリアで繊細な綺麗な音が持ち味であり、MK12 Turrisはダイナミックで臨場感あふれる迫力のある音が特徴です。それぞれの個性がはっきりと分かれているため、用途や好みによって選び分けることができると思います。
総評
音質については、12mmの純マグネシウムダイアフラムの恩恵もあり、迫力がありながら、すべての音がしっかりと聴き取れます。
特に音場の広さや定位の正確さが優秀で、これが本機最大の強みだと感じました。
フィルターやイヤーピース、そしてリケーブルによって、自分好みにチューニングできるのも楽しいです。
これだけ音響性能が優れているので、試しにFPSゲームでも使用してみたところ、相性が良かったです。
定位が正確で、敵の銃声や足音が分かりやすく敵の位置を把握しやすい。
特に距離感が優れており、方向は分かっても距離感を掴むのが難しいイヤホンが多い中で、これは非常に優秀です。
余談になりますが、今回のお話をいただいた際、HIDIZSの担当者さんが自信ありげな口調だったのも印象的でした。
実際に聴いてみて、その自信に納得です。
MK12 Turrisは、ぜひ多くの方に試してもらいたい、おすすめのイヤホンです。
販売情報
HIDIZS MK12 Turrisは、2025年6月10日よりKickstarterにてクラウドファンディングを開始。
通常価格は299ドルとなっていますが、以下のような早期割引プランが用意されています。
- Super Limited Early Bird:129ドル
- Early Bird:229ドル
さらに、S9 ProなどのドングルDACやケーブルとのセット販売もあり、単品で購入するよりもお得な価格設定になっています。
気になる方は、ぜひKickstarterのプロジェクトページをチェックしてみてください。
HIDIZS公式ページ
Kickstarter

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